2015年09月04日

パニックルーム

人混みが苦手な自閉症を伴う重度知的当事者。
人がたくさんいる所に寄らなければ良いと思うが、
何か一旦事が起こったところにこだわり、あえて人ごみに立ち寄る。
又、暮らしの上で立ち寄る必然があるため避けようがなかったりする。

そんな彼のガイヘル。
夕方の買い物客でごった返すスーパーに彼は立ち寄る。
人混みが苦手な理由はたぶん2つ。
一つは、人に触れてしまう(触れられてしまう)事。
もう一つは、人の視線。

彼は、大きな奇声をあげて自分の存在を周囲に知らしめ、
人が自分を避けてくれる事で、人に触れることなく目的の場所に辿りつく。
しかし、
それは同時に、人の視線を集めることになる。
彼に対する偏見や悪意がなくても、人は大きな奇声を耳にすれば、その方向を見てしまう。
大部分の人は不思議なものを見るように彼を見る。
でも、中には悪意に満ちた視線を投げかける人もいる。
時折、「うるさい!」と声をかけられたりすると、
自分が奇声を発した事とは言え、周囲の支線にパニックになる。

私は、ひたすらそんな彼に離される事なく後をついていく。
奇声は発するも「大したことではない」という表情を懸命に作り、
彼と私とは繋がっている事を周囲に知らしめつつ一緒に歩く事に努める。

そんな彼がある日突然、
トイレに駆け込んだ。
そして、トイレ内にある扉を思いっきり閉める音とともに、これまで以上の奇声が聞こえてきた。
そして、すっきりした顔で出てくる。
その日、それを何度か繰り返す場面を見て気づいた事は、

避けようもない人混みにおいて、唯一一人になれる空間がトイレの個室。
耐えきれない自分自身をその中で一旦解消して出てくる彼。

何度目かの時、
彼と同時ぐらいに女性が女性トイレに入って行った。
その瞬間に起こった奇声とトイレを閉める音。
その女性は慌ててトイレを出てきた。
その手前で彼を待っていた私は彼女に、
「驚きましたよね〜」と声をかけた。
「びっくりしたわよ〜」という彼女に、
「当然ですよね。」と同意した上で、
「今入って行った彼は、人混みが苦手でトイレに入り気持ちを落ち着けているんですよ」
「それでもびっくりしますよね」と説明した。

すると彼女は、
「そうなの〜。でも、びっくりしたわよ」と安堵と緊張がごちゃまぜの表情を見せた。
そして、
トイレから平然と出てきた彼を見て、
「そういう事なのね」と言い、
「では」と言って私は彼の後をついてその場を離れた。

再び、店内で彼女とすれ違う時。落ち着いた彼を見て何とはなしにすれ違った。

そんな様子を見ると、
トイレが彼にとってのパニックルーム。
私たちにとって人混みは人ごみでしかないけど、
彼にとってはその人混みがパニック要因。
それを回避するためにトイレに駆け込む。

知的当事者にとっての合理的配慮とは何か?
という疑問を持つ私。
人と人との関係の中に起こっている事として考えれば、
スロープやエレベーターを作るという配慮だけではどうしようもないと思っている。
「関わり方マニュアル」を作ってみても、相手があっての話なのでそれもしっくりいかない。

でも、
もし、スーパーや駅や映画館等人がごった返す場所に、一時避難できる場所が設置されたとしたら。
トイレという手もありだけど、すでに先に使っている人と遭遇すれば、彼にとっては安心できる場にはならず、帰ってパニックを増幅させてしまう。
だからこそ、
一時避難できる囲われた場所を設置してもらえると、自閉症と伴う人たちはかなり安心して社会に進出していけるように思った。
posted by 岩ちゃん at 06:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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